生まれたばかりの赤ちゃん

 少子化はとまらず、むしろ加速しています。2024年に国内で生まれた日本人の子どもの数は68万6061人、合計特殊出生率は1.15で、過去最少と過去最低を更新しました。どう対応すべきなのか、少子化対策に詳しい立命館大学の筒井淳也教授(家族社会学)に聞きました。

 ――国立社会保障・人口問題研究所の推計をみても、より少子化が進むと想定した「低位推計」に近い状況です。

 少子化に歯止めがかからず、全く楽観できません。子どもを出産する年代の女性の数が急減し、出生数が減り続けるのは予測通りともいえますが、問題は減り方のペースです。若年女性の人口減に加え、未婚化・晩婚化、結婚した夫婦の子どもの数がゆるやかに減少していることの三つが背景にあり、厳しいペースで少子化が進んでいます。

 ――若い世代が結婚や出産を希望しなかったり、希望していても選択できなかったりする状況にあります。

 児童手当の拡充など財源の議論ができればすぐに実行でき、直接子育ての支えになるような施策は少子化対策への効果がないとはいえませんが、微々たるものだと考えます。

 若い世代が将来に不安を感じているのは、結婚や出産以前に、雇用や賃金が安定しないことなどがあります。賃金や雇用環境を安定させるには、個別の施策や法改正だけでは難しく、総合的に施策を展開する必要があり、効果が出るまでに長い時間がかかります。結婚や出産の希望をかなえるためには、こうした施策こそが必要なのです。

 政府の少子化対策を盛り込んだ「こども未来戦略」では、最初に「若い世代の所得向上」を掲げています。政治はここをもっと強調し、力を入れていくべきです。

全国転勤、キャリアの中断…若い世代の不安

 ――将来の不安が解消されなければ、結婚や出産といった選択には至らないということでしょうか。

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