Smiley face

 メッセージを受け取った翌日、優しかった人はいなくなってしまった。本当の挑戦を始める自分の支えになる言葉を残して。将棋の西山朋佳女流三冠(29)が22日、棋士編入試験五番勝負の最終第5局に臨む。柵木(ませぎ)幹太四段(26)に勝利すると、女性として初めての棋士となる。棋士養成機関「奨励会」在籍時から声援を送り続けた元「将棋世界」編集長で作家の大崎善生さんは昨年8月3日、下咽頭(いんとう)がんのため66歳で亡くなった。大崎さんはなぜ西山を支え、何を願ったのか。大崎さんの妻である高橋和女流三段(48)と西山本人に話を聞いた。

 2016年、ある夜のことだった。

 前年の暮れに棋士養成機関「奨励会」の最高位である三段に昇段した西山朋佳は、4月から夢への最終関門となる三段リーグを戦い始めていた。

写真・図版
22日、棋士編入試験の最終第5局に臨む西山朋佳女流三冠=2024年9月10日、東京都渋谷区の将棋会館、北野新太撮影

 棋士や将棋関係者が集う食事会に足を運んだ時、同席していたのが大崎善生だった。

 初対面だが、将棋を愛する者同士。楽しく談笑していると、ふと尋ねられた。

 「西山さんは棋士と研究会をしているんですか?」

 いえ……。答えると、すぐに声が返ってきた。

 「西山さんは振り飛車党なん…

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