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法律・事実上死刑を廃止した国や地域&死刑を続けている国や地域の地図

 死刑制度は違憲か、合憲か――。台湾の全ての確定死刑囚が憲法解釈を求めた裁判で、台湾の憲法裁判所にあたる憲法法廷は20日、死刑は合憲としつつ、死刑を極めて厳格に適用するための法改正を求める判決を言い渡した。判決には法的拘束力があり、台湾当局は2年以内に法改正をしなければならない。

  • 台湾、死刑適用の厳格化のため法改正へ 野党「事実上の死刑廃止」

 日本弁護士連合会死刑廃止実現本部の小川原優之(ゆうじ)事務局長は、「最も厳格な手続きを踏まなければ死刑は科せないとした点に驚いた。日本の議論にも非常に大きな示唆がある」と話した。

 日本は死刑を続ける数少ない国だ。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、2023年時点で死刑制度を廃止したり、10年以上執行していなかったりする国や地域は144にのぼる。衰退の流れがあり、アジアでもフィリピンやモンゴルが廃止したが、日本は存続している。

 今回の訴訟で台湾の法務部(法務省に担当)が「影響力のある国々も死刑を堅持している」と存置の正当性を訴え、例に挙げた一つが日本だった。

 戦後すぐに廃止法案が出されたこともあったが、近年は国の世論調査で存置を「やむを得ない」とする回答が8割に上るのを背景に、政府は廃止議論に踏み込まない立場を維持している。

 ただ、日本人の意識にも変化は生まれている。世論調査で「やむを得ない」としている人の中でも、近年は4割が「状況が変われば廃止してもいい」と答えている。若い世代ほどその傾向が強く、19年調査の18~29歳では半数を超えた。

 16年には日弁連が初めて会として「死刑廃止宣言」に踏み込み、終身刑の導入も含めて議論を促している。

 小川原弁護士はこれまでの日本の議論について、「死刑に賛成か反対か」が多く、手続き面の観点が乏しかったと指摘する。「この日の判決は、各論として取り調べの弁護士立ち会いや裁判官の全員一致まで踏み込んだ。憲法の観点から言えば、日本でも同じように解釈することは可能だ」と言及。「今後の議論で正面から取り上げたい」と話した。(高田正幸=台北、阿部峻介)

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