死刑の執行を直前に伝える運用は憲法違反だとして、死刑囚2人が当日告知を受け入れる義務がないことの確認や慰謝料を国に求めた裁判の判決で、大阪地裁(横田典子裁判長)は15日、原告の訴えをいずれも退けた。「死刑確定者に執行時期を事前に知る権利は保障されていない」などと判断した。
- 執行前日「姉さん、もう泣かんで」 拘置所長が録音した死刑囚の肉声
- 【そもそも解説】死刑執行、議論の現状は 詳しい運用実態明かされず
- 【アーカイブ】死刑刑場を初公開 東京拘置所の執行室など6室
判決は、執行方法をめぐる過去の民事裁判で「実質的に刑事裁判の判決の取り消しを求めるもので許されない」とした、1961年の最高裁判例を踏襲。当日告知の執行を受け入れないことは、「死刑執行を許さないという効果を生じさせる」と指摘した。
原告側は「当日告知の是非を争っているだけで、死刑そのものの取り消しまでは求めていない」と主張していたが、「実質は確定した死刑判決の取り消しを求めることになる」と退けた。
さらに判決は「原告らは当日告知の運用を甘受する義務がある」とも指摘。事前に告知したことで自殺した例があったとして直前の告知に変えた今の運用は、「本人の心情の安定や円滑な執行の観点から一定の合理性がある」と結論付けた。
原告側が主張した憲法13条の人格権に基づく「死の時期を知る権利」などについては、「そうした権利は保障されていない」とした。
法務省矯正局は「国の主張が受け入れられたものと認識している」とのコメントを出した。(山本逸生)
原告側「肩すかしの判決だ」
「我々が求めたのは、告知当日の執行を止めてほしいということ。肩すかしの判決で、真正面から判断してほしかった」。原告側代理人の植田豊弁護士は判決後の記者会見で、この日の大阪地裁の判断を批判した。
弁護団は当日告知のほか、死刑の運用をめぐる2訴訟も同地裁で進めている。2020年末から提訴したもので、一つは絞首刑という方法が憲法36条の禁じる「残虐な刑罰」に当たると訴えるものだ。最高裁が1955年に合憲とした論点だが、制度そのものを初めて合憲とした48年の判決には「ある時代に残虐な刑罰でないとされたものが、後の時代に反対に判断されることもありうる」という補足意見も付いた。
原告らは、米国で死刑を残す…