どちらが勝つのだろうか。
強いのはどちらか。頂点を極めるのは――。
勝負事を見つめる上で欠かすことのできない根源的な興味を、始まりから終わりまで抱かせ続けた名勝負だった。
将棋の第10期叡王戦五番勝負が14日、千葉県柏市での最終第5局で決着した。
伊藤匠(たくみ)叡王(えいおう)(22)が挑戦者の斎藤慎太郎八段(32)との最後の激闘を制し、シリーズ3勝2敗で初防衛を果たした。
開幕局から最終局まで共通していたのは、全て「両者秒読みの1分将棋」に突入したことだ。各4時間の持ち時間を使い切った後、互いに1分未満で指さなければならない極限下で劇的な攻防が全局で繰り広げられた。
早々に形勢差が生じることは一度もなく、勝者と敗者の分岐は1分将棋の渦中で揺れ動いた。
勝った者が叡王になる最終局もまた、宿命に従うように五分五分の展開のまま終盤へと進んでいった。
わずかに模様が良いとみられた伊藤だったが、大胆な飛車切りを敢行したことで反撃を食らう。緩手をとがめ、急所に飛車を打ち込んだ斎藤が一時は7年ぶりのタイトル奪取に肉薄したが、伊藤は不屈の耐久を続け、妖しい勝負術を駆使して逆転した。
午後7時38分、斎藤が投了。4月3日に始まった長い戦いは終わった。
伊藤は防衛の感想を問われる…