教諭のスマートフォンには、授業に備えて板書を練習したことがうかがえる画像が複数残されていた。この画像の撮影時刻は午後11時13分だった=2019年7月2日、福岡県春日市、遺族提供

 福岡県春日市の市立小学校で2019年に採用1年目の男性教諭(当時24)が自殺したのは、長時間労働や指導教諭によるパワーハラスメントが原因だとして、両親が市と県に計約9039万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁に起こした。

 両親の代理人弁護士が18日、福岡市内で記者会見し、明らかにした。提訴は8日付。教諭をめぐっては公務と自殺に因果関係があるとして公務災害に認定されている。

 訴えなどによると、教諭は大学卒業直後の19年4月、春日市内の小学校に赴任し、3年生の学級担任を任された。その年の9月12日夜、遺書を残して自殺を図り、翌13日に亡くなった。遺族は20年6月、地方公務員災害補償基金福岡県支部に公務災害を申請。長時間勤務と厳しい叱責(しっせき)を繰り返し受けたことで精神疾患を発症し自殺したとして、21年11月に公務災害に認定された。

 認定によると、教諭は赴任後間もない19年5月の連休明けから2カ月連続で時間外勤務が120時間を上回り、亡くなる前の1カ月も80時間超だった。そのうえ、5月には運動会のエイサーの振り付けを覚えていないとして、指導教諭らから厳しい指導を繰り返し受けた。また、授業の研修をめぐって、必要以上に長時間にわたり他の職員の面前で、叱責を受けるなどしていた。

 訴状で両親側は、校長や市が教諭の労働時間を適切に把握し、健康を損なわないようにする義務を怠った、と主張。パワハラ行為も漫然と放置したため、教諭が精神疾患を発症し自殺に追い込まれた、と訴えている。

 春日市教育委員会は、「訴状が届いていないので確認した上で教員を任命する県と協議して誠実に対応する」、福岡県教委も「訴状が届いたら内容を確認して春日市教委と相談して対応していく」などとしている。

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