A-Stories 武器輸出拡大の舞台裏 緊迫の自公交渉

 首相官邸と小道をはさんだ一角に立つ「内閣府庁舎別館」。この茶色の9階建てビルには、防衛装備移転三原則と運用指針改定の実務を担った「国家安全保障局」(NSS)が入る。

 NSSとは、第2次安倍政権が立ち上げた外交安保政策の基本方針を決める「国家安全保障会議」(NSC)の事務局機関で、2014年に設置された。三原則と運用指針の改定作業は外務省出身のNSS局長・秋葉剛男の下、主に国会議員との調整を元防衛次官のNSS次長・高橋憲一(23年7月以降は同・鈴木敦夫)、実務を外務、防衛、経済産業各省出身の官僚らが担った。

 この建物内で2023年初め、改定に向けた政府原案作りがひそかに進められた。

 2024年3月決定の武器輸出規制の大幅緩和から1年余り。決定に至るまでの自公交渉は予想以上に難航しました。戦後安保政策大転換の舞台裏で一体何が起きていたのか、当事者たちの証言を交え、徹底検証します。

なぜ輸出拡大を目指すのか

 三原則と運用指針の改定が進められる大きなきっかけは、22年末に政府が策定した安全保障関連3文書の一つ、「国家安全保障戦略」で「三原則や運用指針を始めとする制度の見直しについて検討する」と明記されたからだ。

米軍からの注文で生産される81ミリ照明弾=1952年12月撮影

 なぜ政府は武器輸出拡大が必要だと考えたのか。

 一つは、日本が主にアジア諸…

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