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A-stories クマと生きる 悩むアメリカの現場から

 市街地に出没して人家を脅かす危険があるとして捕殺されたり、交通事故でひき殺されたり……。米国でもそうやって母グマを失い、路頭に迷う子グマは数多くいる。

 日本と大きく異なるのが、そういう子グマが一人前になるまで保護される場所があることだ。それを可能にしているのは、市民のパワーだ。日本よりもはるかにしっかりした市民の支えが、米国にはあった。

子グマの保護施設 市民が運営

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キルハム・ベアセンターで保護されている子グマたち。インスタグラムで日々の様子が発信されている=2024年11月、米ニューハンプシャー州、キルハム・ベアセンター撮影

 木登りをしたり、じゃれあったり……。野生の子グマのリハビリ施設「キルハム・ベアセンター」は、クマたちの様子の映像を日々インスタグラムに投稿して、世界中から約26万人のフォロワーを集めている。

 施設は、アイビーリーグ(米東部の伝統校8大学)の一校、ニューハンプシャー州のダートマス大学から車で約30分離れた山中にある。

 所有する山林は東京ドーム8個分、約40万平方メートル(100エーカー)の広さ。そのうち、電気柵に囲まれた約4.5万平方メートルの森で、クマたちが暮らす。

日本では、たとえ捕らえられたクマがまだ幼くても、その大半が殺処分されます。一方、米国には子グマを保護して野生に戻すまでリハビリする施設があります。運営するのは市民たち。なぜそれが可能なのかを探ってみました。

市民が運営する保護施設

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キルハム・ベアセンターで働くイーサン・キルハムさん。建物には保護されて間もない子グマがいて、慣れてくると背後に広がる東京ドーム1個分の広さの山林で育てられる=2024年8月31日、米ニューハンプシャー州、伊藤恵里奈撮影

 センターは1993年、ベン…

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