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明日への一石~大変革期を考える
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記者解説 ヨーロッパ総局長・杉山正

 ウクライナとロシアの停戦協議をめぐる動きが激しい。米国が提案した「即時停戦」の成立は不透明だ。はっきりしているのは、自由や民主主義を基軸にしてきた国際秩序が揺らいでいることだ。

 米トランプ政権は、軍事支援や機密情報共有を一時停止してウクライナに譲歩を迫り、ロシアの暴挙は侵略と呼ぶのを避けた。リベラルな価値観を共有してきたはずの同盟国との亀裂は深まる。

 私は戦争や紛争の現場に何十回と足を運んできた。多くが自由や民主主義を求める戦いだった。

 アフリカ特派員として海外取材を始めた2011年は、中東の権威主義国家が民主化のうねり「アラブの春」の中にあった。

 リビアはSNSを活用した市民デモをきっかけに、カダフィ政権を打倒する内戦になった。当時のリビアは高揚感に包まれていた。優勢な反体制派の民兵たちはカメラを向けると笑顔を見せていた。

 オバマ政権下の米国と北大西洋条約機構(NATO)の同盟国は、デモ参加者の命を救う「人道的介入」を掲げてリビアに軍事介入。戦いの勝敗を決定付けた。最高指導者だったカダフィ氏は死亡し、欧米は政権崩壊を歓迎した。

 3年後の14年、再びリビアを訪れると国家は破綻(はたん)していた。「石を投げたら国自体が壊れるとは思わなかった」「アラブの冬だった」。デモに参加していた男性の言葉が印象的だった。

ポイント

 米国の軍事介入が2000年代以降に失敗を重ね、世界の民主主義は後退している。ロシアによるウクライナのクリミア半島併合は、国際秩序が流動化する転機となった。米国への信頼が低下するなか、国際秩序や核不拡散の体制までもが危機下にある。

 反体制派が軍閥化して群雄割…

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