若い世代からも支持され、近年存在感が増しているラジオ。その聴取行動を支えるのが、スマートフォンやパソコンでラジオが聴けるサービス「radiko(ラジコ)」だ。2010年12月に本サービスが始まり、今年で15周年を迎える。6月19日付で新社長に就任した池田卓生氏(TBSラジオ執行役員)が朝日新聞の取材に応じ、radiko、そして音声メディアの未来について語った。

radikoの池田卓生社長=東京都港区、西田理人撮影

池田卓生(いけだ・たかお)

1969年生まれ、大阪府出身。ラジオ番組制作会社を経て、2001年にTBSラジオ&コミュニケーションズ入社。深夜放送「JUNK」などを手がける。「赤江珠緒 たまむすび」初代プロデューサー。22年からTBSラジオ執行役員。25年6月19日、radiko社長に就任。

「一緒に未来を描くタイミング」

 ――「radikoの社長に」と打診を受けたときはどう思われましたか。

 驚きました。radikoに(社長として)放送局から人を……というのが今回初めてなので、そういう人事があるのか、と。

 ただ、私はラジオが好きで、ずっとラジオに関わって生きてきました。民放ラジオ全99局、そしてNHKという、プロのコンテンツを扱うプラットフォームにいくことは楽しみですし、いろいろやってみたいと思っています。

 ――「いろいろやってみたい」とのことですが、具体的には。

 radikoは今も、世界に類を見ない非常に優れたプラットフォームだと思っています。このプラットフォームをもっと活用してもらいたい。

 いまradikoのMAU(月間アクティブユーザー)が平均850万くらいなのですが、(社長就任にあたって)これを2千万にしろと言われています。TVerのユーザー数が今4千万MUB(月間ユニークブラウザ)なので、いつかはそれぐらいの数字になればと思います。

 広告面では、radikoだとラジオではできないターゲティングがしっかりとでき、「20代限定」「エリア限定」といった広告配信が可能です。そうした利点をもっと広告主の皆様にも知ってもらいたいですし、ラジオはエンゲージメントが非常に強いメディアなので、ぜひそこも活用いただきたいです。

 ――民間のラジオ局から初めてradikoの社長に就くことについてはいかがですか。

 radikoはプラットフォームで、放送局はコンテンツを提供するコンテンツプロバイダーの立ち位置でした。向き合い方としては「正面」と言いますか。

 そこから、radikoと放送局が一緒になって、同じ音声コンテンツの未来を見ましょう、一緒に描いていきましょう、と。スピード感を持ってシームレスに、放送局の未来を考える、それが今回のタイミングなのだと思っています。

radikoのロゴマーク=radiko提供

 ――2010年にradikoのサービスが始まりましたが、登場したときはどう思われましたか。

 すごいなと思いました。「スマホに入るんだ」と。当時ラジオ受信機を持つ人がだんだん少なくなってきていて、どうする? やばいんじゃないか、といった状況で仕事をしてきたので。スマホで聴ける、ブラウザーで聴けるというのは、画期的でした。

試験配信をしていた当時のradikoの画面=2010年5月

 ――2016年には、過去1週間の放送をさかのぼって聴ける「タイムフリー」の機能が加わりました。

 「聴き逃してしまった方はradikoで聴いてください」と言えるようになったのは大きいですよね。ラジオ番組は結構ネット記事になるんですが、記事を見た方の「そんな番組やってたんだ」「聴いてみたい」というニーズに、応えられる環境になりました。

業界の課題だった「ラジオのデジタル化」

 ――池田さんは93年にラジオの番組制作会社に入られたとのことですが、そこからラジオ業界はどう変化してきましたか。

 一番変わったのはデバイスの…

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