Submarines Are Hard to Detect. Climate Change Might Make It Even Harder.

 潜水艦は、世界で最も先進的で破壊力が強い兵器システムの一つだ。魚雷や巡航ミサイル、ときには大陸間弾道弾を搭載して、海中深くで一度に何カ月も活動できる。しかも、艦体の探知が極めて難しいことで知られている。

 そして今、広大な海に潜伏するその能力が、意外な原因で押し上げられているかもしれない。すなわち、気候変動によって。

 潜水艦が潜む海洋は急速に温暖化が進んでいる。人類が温室効果ガスを排出し、大気中に閉じ込められた余分な熱が、海に取り込まれるからだ。北大西洋条約機構(NATO)の教育・研究機関である、ローマのNATO国防大学が最近公表した研究論文によると、この海水温の上昇が、潜水艦探知の主な手段である水中の音波の伝わり方に強く影響を及ぼす可能性がある(訳注:研究では塩分濃度の変化も考慮している)。

 その影響により、海洋の広大な領域で潜水艦の探知ができなくなる、ということもあり得るのだ。

 軍事技術の研究者マウロ・ジッリ氏は「私たちが調べた地域の大部分で、探知可能な距離が短くなることを確認した」と述べた。ジッリ氏の研究チームは深海での音波の進み方を数値モデル化し、1970年から99年まで30年間の平均値を入力した。次に今の気候モデルで予測した2070年から99年の平均値を入れ、結果を比較した。両者には重大な差異があった。

 研究チームによると、ロシアの潜水艦がNATO軍と追いつ追われつの活動をしている北大西洋では、潜水艦の音を探知できる距離が著しく短くなることが判明した。フランス西岸とスペイン北岸に面するビスケー湾では、ほぼ半分になる可能性がある。中国と米国の潜水艦が活動する西太平洋でも、探知できる距離は最大20%縮む可能性がある。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

潜水艦探知が難しくなる場所ばかりではありません。日本海の浅い海域では、北朝鮮の潜水艦の探知がこれまでより容易になるかもしれないそうです。

 科学的な背景となるのは、音…

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