気候変動対策における1年で最大の交渉機会となる国連気候変動会議(COP29)が11日からアゼルバイジャンで始まる。交渉の土台となる科学的知見を提供する国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のジム・スキー議長が朝日新聞のインタビューに応じた。
昨年のCOP28では、合意文書に「化石燃料の段階的廃止(phase out)」という強い文言を入れるよう島国などが求めたが、反対も強く、結果的に「化石燃料からの脱却(transition away)」となった。
スキー議長は、それでもこの動きを進歩と認めつつ「ただ、私たちは単なる言葉遊びをしているわけではありません」と釘を刺す。IPCCの報告書が示しているのは大幅な化石燃料の削減が不可欠だという事実だ。産業革命前からの気温上昇を1.5度または2度にとどめるという国際目標に必要な、具体的な削減幅も提示している。
また、これまでの合意文書では、議論の対象とする化石燃料の発電施設などについて「排出削減対策がない(unabated)」ものに絞るという条件がついている。日本は石炭などとアンモニアを一緒に燃やす「アンモニア混焼」も「対策済み」とみなしている。各国でも解釈はあいまいだ。
これに対しては、「私たちの定義では、アンモニア混焼は本当の削減ではないと言わなければならない」と断言。IPCCは「対策がある」の定義を「発電所から排出される温室効果ガスの90%以上を回収する」としている。
IPCCは、1.5度目標の達成には、温室効果ガスを19年比で35年までに世界で60%削減する必要があるとする。各国は来年2月までに35年までの新たな削減目標を出すことになっている。スキー議長は「日本のような先進国の場合、もう少し削減が早く進むことを期待するべきかもしれない。60%以上の削減が期待されるということだ」と述べた。
COP28の合意文書には、初めて原子力を脱炭素の手段の一つとした。今後の活用も論点となりそうだ。
ただ、スキー議長は「報告書の一つのシナリオでは、世界的に原発の利用が拡大することを想定しているが、再生可能エネルギーの拡大ほどではない」と断った上で、「安全性を理由にある国では使わないこともあるだろう。それが良いことか悪いことかと言うのは私たちの仕事ではない」とした。
インタビューは10月末に行…