トランプ米大統領の肝いりで成立した大型減税法は、米国の脱炭素化を後退させかねない。減税分を穴埋めする財源として、バイデン前政権が気候変動対策として成立させたインフレ抑制法(IRA)による電気自動車(EV)や再生可能エネルギーなどへの税控除を廃止するからだ。市場や脱炭素の動きはどう影響を受けるのか。
■電気自動車
IRAでは、2032年までEV新車1台あたり最大7500ドル(約110万円)を購入者に税額控除する予定だった。しかし、トランプ政権の新法「一つの大きく美しい法」により、控除は25年9月末に前倒しで終了する。
トランプ氏は大統領選時からEVに批判的だった。EVが広がれば、ガソリン車の内燃機関関連の製造業の雇用が失われるおそれがあり、支持基盤である米中西部の「ラストベルト」(さびついた工業地帯)の人々に打撃を及ぼす。23年にはトランプ氏は自動車企業の労働組合の集会で、当選すればEV支援をなくすと約束していた。プリンストン大学の研究チームは、30年の米国のEV販売台数が4割減るとの推計も出している。
起業家のイーロン・マスク氏…