2025年3月28日、グリーンランドのピトゥフィク米宇宙軍基地を視察するバンス米副大統領=AP

 トランプ米大統領は4日、米NBCニュースのインタビューで、デンマーク自治領グリーンランドを領有するために軍事力の行使も否定しない考えを改めて示しました。バンス副大統領も3月末にグリーンランドを訪れ、米国による領有を主張しました。「北極海 世界争奪戦が始まった」(PHP新書)などの著書がある海上自衛隊幹部学校の石原敬浩(たかひろ)非常勤講師(元1等海佐)は「トランプ政権はグリーンランドを遠ざける行動を取っている」と語ります。

 ――過去、米国とグリーンランドはどのような関係だったのですか。

 米国は19世紀末からグリーンランドに関心を持っていました。第2次世界大戦でナチスドイツがデンマークを占領した際、同国の駐米大使が米国と交渉し、グリーンランドを巡る安全保障協定を結びました。米国は欧州を支援する中間拠点をグリーンランドに設け、独潜水艦Uボートを攻撃するための拠点にもしました。

 冷戦期には、デンマークは米国にグリーンランドの基地を提供する代わりに、北大西洋条約機構(NATO)で発言力を確保しました。

氷河の下に秘密基地を建設した米軍

 ――グリーンランドは過去、米軍による核物質汚染の被害を受けました。

 米軍は冷戦期、グリーンランドから核ミサイルを発射する構想を持ち、氷河の下に秘密基地「キャンプ・センチュリー」を建設しました。小型原子炉で発電し、居住区域や娯楽施設も設けたそうです。

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 ただ、移動する氷河の下からミサイルを発射することは難しく、基地は廃棄されました。地球温暖化で、核廃棄物や汚染物質が流出する危険が指摘されています。

 また、1968年1月、グリーンランドのチューレ米空軍基地(現ピトゥフィク米宇宙軍基地)付近にB52戦略爆撃機が墜落しました。同機は水爆4発を搭載し、3発は回収されましたがバラバラになり、核汚染物質が広がりました。1発はまだ見つかっていません。

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 ――グリーンランドは米国の…

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