香川と岡山の島などを舞台とした3年に1度の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2025」が開かれている。瀬戸内の文化や暮らし、景観などに刺激を受けて制作された独創的な作品を紹介する。

岡淳+音楽水車プロジェクト「Reverberations残響~岡八水車」

 小豆島(香川県)の特産物であるそうめんを製造していた備品などが「楽器」になった。

 千枚田で有名な小豆島町中山地区。穏やかに流れる川のそばに立つ築120年の水車小屋兼住宅に、その演奏装置はある。制作した岡淳さんの曽祖父母がここで暮らしていた。

 1950年代まで水車を用いて精米や製粉、そうめん作りなどを手がけていた。直径約3.4メートルという水車はすでに撤去され、その面影が残るのは天井のシャフトのみ。

そうめんを干すための道具「ハタ」や、そうめん箱などを用いた装置でリズムを刻む=2025年4月16日午前10時33分、香川県小豆島町中山、渡辺杏果撮影

 中に入ると、歯車で動く自動演奏装置が「ズッジャーン、カッカッカッ」と独特の音色とリズムを奏でている。そうめんを入れる箱と、そうめんを干すための道具「ハタ」、シンバルなどが組み合わされている。

装置が動き出すと自動でリズムが刻まれる=2025年4月16日午前10時39分、香川県小豆島町中山、渡辺杏果撮影

 1階の中央には、来場者が演奏できる木琴もある。音盤は調音したハタ、共鳴パイプはそうめん箱を用いている。

 来場者は、自動演奏の装置と木琴のジャムセッションを楽しめる。

 岡さんは、曽祖父母の水車のある暮らしに思いをはせて制作した。「水車は水循環の中でエネルギーを借りて回る。素敵な自然の恵みの記憶を音でよみがえらせたい」

風の力でもみと米を分ける「とうみ」は、ハンドル式の弦楽器になった=2025年4月16日午前10時44分、香川県小豆島町中山、渡辺杏果撮影

 確かに、この建物に新たな「循環」が生まれているようだった。

小豆島(小豆島町)【会場へのアクセス】

 土庄港、池田港からバスが利用できる。最寄りバス停は「春日神社前」。

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