工房巡りの観光案内所「クラフト・インビテーション」を立ち上げた内田徹さん=福井県鯖江市片山町

 福井県鯖江市の中心部から東へ10キロ弱の河和田地区は、「うるしの里」と呼ばれる越前漆器の生産地だ。この地に7月、漆器や和紙、たんす、打刃物、焼き物といった伝統工芸や、眼鏡、繊維など、ものづくりの産地を紹介し、産業観光の拠点となる案内所「クラフト・インビテーション」がオープンした。

 内田徹さん(48)は、この案内所を開設した一般社団法人「SOE(ソエ)」の代表理事を務める。

 「半径10キロ圏内にこれだけ多彩なものづくりの産地が集積しているのは世界的にもまれなこと。国内外から訪れる多くの人に製品に込められた物語や魅力を伝えたい」と話す。

 河和田地区で江戸時代の1793年に創業した漆器製造販売「漆琳堂」の8代目に生まれた。だが、幼いころから得意だったのはスポーツで、愛知の大学の教育学部に進み、体育教師を志していた。

 家業を初めて意識したのは大学4年の教育実習で地元に戻ったとき。実家に寝泊まりしながら、両親の働きぶりを間近で見たことで家業への関心が高まった。

 「自分はやっぱり商売が向いている」と方針転換し、在学中に家業の名刺をつくり「入社」した。卒業後は見聞を広めるため、東京の問屋などに就職することも考えたが、出入りしていた漆商からこう言われた。

 「おじいさんとお父さん、2…

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