将棋の第66期王位戦挑戦者決定戦(新聞三社連合主催)が22日、東京都渋谷区の将棋会館で指され、永瀬拓矢九段(32)が佐々木勇気八段(30)に125手で勝ち、藤井聡太王位(22)=名人・竜王・王座・棋聖・棋王・王将=への挑戦権を獲得した。七番勝負は7月5日に開幕する。
現在進行中の名人戦七番勝負で藤井名人に挑戦している永瀬九段は、1~3月の王将戦も含め、今年に入ってから3度目となる対藤井戦の2日制七番勝負に臨む。局後は「(王位戦は)上にいくのが大変で、良いことのない棋戦でしたので挑戦を決めることができてよかった」と語った。
インタビューに応じる永瀬拓矢九段
佐々木八段との大一番は振り駒で先手に。角換わり腰掛け銀の定跡形の戦いとなったが、中盤でリードを奪った後は一度も棋勢を譲らないまま勝ち切った。
永瀬九段にとって、2学年下の佐々木八段は小学生の頃から世代の覇権を争ってきた存在。同期で入った棋士養成機関「奨励会」で修業時代を共に送り、現在も練習対局を重ねるなど研鑽(けんさん)を積んできた間柄だ。タイトル戦の挑戦者決定戦で顔を合わせるのは初めてだったが、先輩が貫禄を見せた形となった。昨年の竜王戦に続く2度目のタイトル挑戦とはならなかった佐々木八段は「研究不足だった。攻めが細いと思いましたが、勝負すべきでした」と肩を落とした。
永瀬九段は今期10勝4敗。過密日程の中、藤井戦以外で9勝1敗と勝利を重ねている。七冠と2日制で対局することが棋力向上につながっているとし「得るものが多いです。2日制では封じ手が終わった後も考えるので、考える時間が長いんです。藤井さんと(対局で)接する時間が長いのはメリットです」と明かした。
進行中の名人戦は開幕3連敗を喫して追い込まれたが、千日手指し直しの激闘となった17、18日の第4局を制して踏みとどまった。29、30日に控えている第5局に向け、王位挑戦を弾みとしたいところだ。
夏季に開催するため「真夏の王位戦」と呼ばれるタイトル戦に向け、挑戦者は「夏はかなり弱いのですが言い訳には全くならないので、頑張って熱を逃がしたいです」と語る。暑さ対策として「扇風機は(用意)いただくかなという印象です。扇風機ならエアコンと違って(相手に配慮せず自身の判断のみで涼を取れる)個人戦。扇風機が本線になるかなと思います」。挑戦者には暑く、そして熱い夏が待ち受けている。