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 オリンピック(五輪)の準備が進むパリの街は、100年ぶりに戻ってくる五輪の色に染まりつつある。

 エッフェル塔の間近には砂が敷き詰められ、その周りを仮設の観客席が取り囲んでいた。ビーチバレーが開催される「エッフェル塔スタジアム」だ。

エッフェル塔が見えるビーチバレーの競技会場では、観客席の設置作業が進んでいた=2024年4月24日、パリ、柴田悠貴撮影

 観光名所を競技会場として活用するのが今大会の特徴の一つ。既存か仮設の施設によって、大会で使う全施設の95%をまかなう計画だ。

 エッフェル塔スタジアムで仮設設備の設置を手がけるGLイベンツ(本社・仏リヨン)は、1992年のアルベールビル冬季大会から五輪の運営に関わってきた。同社の幹部の一人は、大会の変化をこう口にする。

 「大会をよりシンプルなものにするという概念に戻っている。(五輪を口実に)政府が何百万、何千万ドルもする新しい施設を造ることを、ためらうようになった」

 国際オリンピック委員会(IOC)が、運営コストの抑制を促すようになったことが大きい。巨額な財政負担を嫌い、開催に名乗りを上げる都市が減ることを懸念しているためだ。

パリの皮算用は

 パリ大会に向けて新設された会場は、新体操やバドミントンが行われる総工費1億3800万ユーロ(約220億円)の「アディダス・アリーナ」など2カ所だけ。それでも、大会の予算は総額で約89億ユーロ(約1兆5千億円)となる見通しだ。

写真・図版
五輪・パラリンピックに合わせ、新たに建設されたアディダス・アリーナ=2024年4月30日、パリ、柴田悠貴撮影

 抑制的な方向へと進んではいるが、依然として多額の費用が必要になる五輪。公金も投じられるだけに、開催都市は地元住民の理解を得るため、大会にともなう経済波及効果に言及する。

 5月14日、大会組織委員会のトニ・エスタンゲ会長は、パリ首都圏での経済効果が3パターンの見積もり平均で89億9千万ユーロ(約1兆5300億円)になると発表した。大会予算に占める公的負担は約30億ユーロ(約5100億円)といい、「公共支出1ユーロに対して、地域に3ユーロの経済効果を生み出す」と語った。

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