奈良県桜井市の「外山(とび)」という地域には、江戸時代から伝わる大量の古文書が保管されています。その古文書の整理を大淀町教育委員会学芸員の松田度さんが、ボランティアで始めました。どんなことが分かってきたのでしょうか。松田さんに紹介していただきます。
「外山」と書いてなぜ「とび」と発音するのか
筆者は大阪市生まれですが、縁あって2014年、奈良県桜井市外山(とび)が永住の地になりました。ここは、記紀伝承にも登場する鳥見山(とみやま)の北麓。3世紀にさかのぼる外山茶臼山古墳(全長200メートル)もあります。
「外山」と書いて、どうして「とび」と発音するのか。いったい、いつから、そんな地名になったのか。それを証明する資料が地元に残っているのか。
見つけてみたい。そんなことを考えながら、外山の住民になって10年目を迎えたある日、外山区からの便りが目に留まりました。
そこには、江戸時代の外山村の時代から伝わる古文書を区で保管しているが、衣装ケースに詰め込まれた状態で、2千点もしくは3千点はあるとみられ、全貌(ぜんぼう)を明らかにするのは難しい、といったコメントが書かれていました。
なるほど。みなさんは古文書をひらいてみたことがあるでしょうか。独特の筆文字がおどる墨書きの世界。つい200年ほど前に書かれた日本語でも、外国語のようにみえてしまいます。まさに古文書が嫌われる理由はそれです。
思いがけない文書も
そうだ。この古文書を手掛か…