済美先発の梅原朋貴投手=2025年7月29日午前10時0分、坊っちゃん、水田道雄撮影

 (第107回全国高校野球選手権愛媛大会決勝、 済美4―3松山商=延長10回タイブレーク)

 「先に顔を上げた方が負けだと思っていた。緊迫した戦いだった」

 済美の梅原朋貴投手(3年)は試合が終わった後、熾烈(しれつ)な決勝をそう振り返った。松山商打線を十回まで被安打6、5奪三振に抑え、投球数120球で完投した。

 決勝での最大の試練は、打者として迎えた。

 2点を勝ち越された延長十回裏、無死一、二塁で始まるタイブレークで、先頭で打順が回ってきた。その直前、足に打球があたる強襲安打で一時ベンチに下がるアクシデントがあった。

 「自分の仕事をして、後は野手のみんなに任せる」。そんな思いで打席に立つと、犠牲バントが見事に決まった。その後、相手の失策や葛原大翔選手(2年)の犠飛で同点に追いつき、牛草智裕選手(3年)の適時打でサヨナラ勝ちした。その瞬間、梅原投手が「尊敬する」と語ってきた田坂僚馬監督はベンチ前でひざまづいた。「ここまでくるのに本当に苦しい時間だった」

 済美は2018年の全国選手権100回大会に代表校として出場した。星稜(石川)と対戦した2回戦延長十三回タイブレークで、済美の矢野功一郎選手が逆転満塁サヨナラ本塁打を放った。10歳だった梅原投手はその場面に感動して済美の野球部に入り、甲子園を目指した。

 勝者と敗者に分かれた2つのチームが整列したとき、梅原投手は、投げ合った松山商の小林甲明投手(3年)に「ナイスピッチング」と声をかけた。小林投手からすかさず言葉が返ってきた。「甲子園で優勝してこいよ」

 夢に見た甲子園の切符をようやく手にした。「すべての人の思いを背負って戦っていきたい」

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