「有事」の際に沖縄・先島諸島から避難してくる住民を九州・山口の各県が受け入れる「初期的な計画」が3月末に公表された。国は「特定の有事を想定していない」と強調するが、何を目的とするどのような計画なのか。国民保護に詳しい日本大学危機管理学部の中林啓修・准教授に聞いた。
「初期的な計画」では避難期間を1カ月として、沖縄・先島諸島の住民ら計12万人を航空機で6日間かけて移送します。この計画を基に2年かけて中長期的な「受け入れ基本要領」が策定されます。
――「有事」が想定される緊迫した状況下で、「九州に避難できるのか」「飛行機で避難するならもっと遠くに逃げるべきだ」といった声が住民らから聞こえます。
「有事の際に沖縄・先島の住民は九州・山口に避難する、と決まったわけではありません。住民の受け入れを伴う検討をする上で、本土や沖縄本島から遠く、勢力を増している中国の正面にあたる先島を避難地域にするという選択は妥当性があります」
「また、沖縄との関係性も踏まえて国が受け入れの検討をする協力を求めたのが『九州・山口』だったということです。実際の有事で、ホテルの多い東京や大阪の都市圏を避難先に指定することはあり得ると思います」
――今回の検討をめぐって、政府には中国が台湾に武力行使をする「台湾有事」が念頭にあるとされます。ただ、内閣官房の担当者は「特定の有事を想定していない」と強調しています。
「もちろん、国として台湾有…