10歳で沖縄戦を経験した玉寄哲永さん。記者会見で「米軍に解放されたという感覚はない」と語った=2025年5月9日、沖縄県庁、金子和史撮影

 自民党の西田昌司(しょうじ)参院議員が、沖縄戦で犠牲になった学徒隊の生徒らを慰霊する「ひめゆりの塔」(沖縄県糸満市)の説明内容を「歴史の書き換え」などと発言したことについて、沖縄戦の体験者らが9日、那覇市で記者会見した。玉寄哲永さん(90)は「西田氏のような発言を許すわけにはいかない」と話した。

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 玉寄さんが10歳だった時、米軍が沖縄本島に上陸。家族で逃げ回る中、父と一晩がかりで掘った壕(ごう)は日本兵に追い出された。3歳だった弟は米軍の艦砲射撃で亡くなった。

 玉寄さんは米軍に投降した時、「もうこれで逃げることはない。生きていける」と思っただけ。だから、西田議員が講演で述べたような「アメリカが入ってきて、沖縄が解放された」とは感じなかった。

 西田議員の発言について、「そういうことではない。(発言は)沖縄戦の実態を知らない『軽さ』を感じる」と語る。

 文部科学省が2006年、高校の歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決」について修正を求める意見を付け、「軍の強制」の記述が削除される問題が起きた。07年9月に記述回復などを求める県民大会が開かれ、約11万人が抗議した。玉寄さんはその呼びかけ人を務めた。

 当時設立した「9・29県民大会決議を実現させる会」は今も存続しており、玉寄さんは顧問を務める。「歴史を都合良く書き換えようとしている。歴史の事実に向き合ってほしい」と話した。

  • 自民・西田昌司参院議員の発言要旨(沖縄タイムス提供)

玉城知事「県民の心を傷つけた」

 沖縄県の玉城デニー知事は報道陣にコメントを発表し、「発言は戦争体験者や遺族、県民の心を深く傷つけ、憤りを禁じ得ない」と批判した。その上で、「ひめゆり平和祈念資料館などを改めて訪れ、県民の思いに真摯(しんし)に向き合って頂きたい」と求めた。

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