法隆寺で開かれた音舞台。今年は「風」をテーマにした=MBS提供

 奈良や京都の名刹(めいさつ)や世界遺産に一夜限りの舞台を設け、国内外のアーティストが演奏を奉納する「OTOBUTAI(音舞台)」。

 37回目の今年は、奈良・法隆寺を会場に9月に開催され、11月10日深夜0時半から毎日放送(MBS)・TBS系列全国ネットで放送される。運営するMBSのスタッフたちは、例年とは少し違う、ある特別な思いを持って臨んだ。

 1989年に京都・金閣寺から始まった奉納コンサートは「東洋と西洋の出会い」を掲げ、これまでに200組以上の国内外のアーティストが出演してきた。

 今年のテーマは「風」。MBSの河原萌プロデューサー(31)が法隆寺を下見で訪れた際、境内でまとわりつく風を感じ、直感で思いついたという。風によって季節の移り変わりを感じたり、亡き人を偲(しの)んだり。「黒田さんのためにも成功させたい、と思ったんです」

 黒田さんとは、音舞台に30年以上携わり、チーフプロデューサーを務めた黒田雅浩(まさひろ)さんのことだ。昨年12月、がんで亡くなった。61歳だった。

 「音舞台はおれの命」が口癖で、新しいモノや故・坂本龍一さんの音楽が大好き。おおらかな性格で、スタッフ全員から愛される人だった。

 8年ほど、仕事をしながら闘病を続けた。決して弱みは見せず、病気のことは悪化するまで言わなかった。

 どうすれば舞台を楽しんでもらえるか。音舞台の成功に全力を注いだ。杉本誠担当部長(51)は「昨年も現場に立ってくれて。このチームでもっと仕事をしたい、そんなことを思わせてくれる人でした」と話す。

 今年9月の本番。スタッフ全…

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