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高層の災害公営住宅から眼下に広がる担当地区を示す自治会長の伊東征吉さん。指さす先の道路沿いに床屋兼自宅がある=2025年2月1日午前10時43分、宮城県気仙沼市南郷、山浦正敬撮影
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 町は津波に襲われ、家々は流され、被災した小学校は廃校になった。東日本大震災から14年。宮城県気仙沼市の南郷地区では、道路が整備され、災害公営住宅や補修したり再建したりした家々が立ち並ぶ。

「迷惑かけっから」

 同地区で昨秋、津波避難訓練が開かれた。杖をついたり、手押し車を押したり。足腰が弱った人も続々とやって来た。地区の津波避難場所に指定されている中高層の災害公営住宅に集まった地域住民約100人の多くは高齢者だった。

 想定される最大クラスの津波の高さは、約5~10メートル。約2メートルだった東日本大震災をはるかに超える。

 そのため訓練は、災害公営住宅の住民も4階以上まで上がる内容だった。

 しかし、足腰の弱った人たちは階段を前にあきらめ、1階の昇降口で解散した。

自治会長が記憶から消せないのは、東日本大震災のとき、寝たきりだったり体が不自由だったりして動けず、犠牲になった住民たちのことです。どうすればよいのか、複数の地区のケースから考えます。

 自治会役員が、2、3階の住民にも上階への避難を呼びかけたが、「みんなに迷惑かけっから」と自室にとどまった車いす生活者も複数いた。

 そもそも市の言う「30分以…

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