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訓練中、園児にライフジャケットを着せる園の職員ら=宮崎県延岡市、三浦英之撮影
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 東日本大震災で多くの子どもが保護者への引き渡し後に津波で犠牲になった教訓から、全国の学校や保育施設では「津波警報・注意報が出ている間は子どもを引き渡さない」という取り組みが広がっている。一方で、実際の災害時にその方針をどこまで守れるのか、不安視する現場の声もある。昨夏の地震で津波注意報が出され、保護者に引き渡すかどうかの選択を迫られた宮崎県延岡市の土々呂幼稚園・市来千代子園長(81)に聞いた。

南海トラフで9m超す浸水予想

 土々呂幼稚園は海の入り江のそばにあります。

 園は標高約2メートルの場所にあり、周囲は南海トラフの津波で最大9メートル以上浸水すると予想されています。津波が発生する恐れのある地震が起きた際には、約450メートル離れた標高約20メートルの神社に避難します。東日本大震災の教訓を受け「津波発生時は園・避難所に迎えに来ないで連絡を待つ」「津波が引くまで迎えに来ない」と保護者と確認書を交わしています。

  • 「責任はとる、行って!」 子ども54人守った保育所長

 昨年8月8日の地震で津波注意報が出ました。

 午後4時42分ごろ、日向灘を震源とする地震が発生し、延岡は震度4で津波注意報が出たため、園に残っていた1~5歳の園児28人と職員16人が落ち着いて高台に避難しました。

 到着後、午後5時5分にマニュアルに従って保護者に「安全が確保されてから迎えをお願いします」と一斉メールを送りました。

保護者の「迎えに行く」を断った

 保護者の反応は?

 津波の第1波が園近くの港に到達し、保護者からは「迎えに行く」という電話が1件ありましたが、断りました。

 しかしその後、神社の下に車が止まり、続々と保護者が集まってきてしまいました。「子どもを帰してほしい」と園児の引き渡しを求める保護者もいましたが、「一緒に帰してはならない」と思い、「安全が確認できるまではダメです」と断りました。苦情などは特に寄せられませんでした。

 しかし、その日は暑くて気温も30度以上。林の中で蚊も多く、夜になるにつれ園児の体調が心配でした。

 「引き渡さない」方針は守れましたか?

もし津波来ていたら…保護者が犠牲になった可能性

 夜が迫り、解散すべきか、高…

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