映画「先祖になる」の上映会で映し出された故・佐藤直志=2025年6月21日、長野県伊那市、東野真和撮影

現場へ! バラバラ文化財の再建(3)

 津波で流された岩手県陸前高田市の旧吉田家主屋の復旧で、見つからなかった部材や損傷がひどく使えなかった部材の一部は、吉田家所有の山から木を切り出して補った。

 部材を想定しながら木を選び伐採を指示する「木挽(こび)き棟梁(とうりょう)」は、佐藤直志(享年89)が担った。旧吉田家のある今泉地区に住み、震災前からかやぶき屋根の手入れをしていた。「大庄屋さん(旧吉田家)は地域の宝物」と周囲に語り、部材集めにも協力し、使命感を持って木を切った。

 佐藤が主人公のドキュメンタリー映画「先祖になる」の上映会が、6月21日、長野県伊那市であった。

映画「先祖になる」上映会で映し出された故・佐藤直志=2025年6月21日、長野県伊那市、東野真和撮影

 佐藤は長男を津波で亡くした。自らも前立腺がんを患っていたが、被災直後、町内会の解散が話し合われた住民会議で「来春にも我が家を建てる」と宣言。仮設住宅に入らず、小屋で寝泊まりしながら自ら木を切り出し、自宅を再建した。

新しい町の礎になるという覚悟

 岩手県無形民俗文化財の祭り「けんか七夕」で使う山車を造り直す木を提供するなど、地域の再生に尽くした1年半を追った映画だ。佐藤が吉田家の木挽き棟梁になる前の2013年に公開、今も各地で上映され続けている。

 新しい町の礎になるという覚…

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