青森県の津軽半島と、イギリスのロンドン。約1万キロ離れた二つの場所にある狩野派のふすま絵が、四季を描いた一連の作品だったことがこのほど、分かった。約400年前に作られた絵を結び付けたのは、1人の研究者の直感だった。
17日、青森県中泊町の教育委員会が発表した。大正期のステンドグラスで有名な同町の旧家、宮越家の離れ「詩夢庵(しむあん)」に、そのふすま絵「花鳥図」はある。それぞれ縦約170センチ、横約110センチの4枚組み。大地主だった宮越家の9代当主・宮越正治が、1922(大正11)年ごろに東京で売りに出されていたものを購入したと言われている。
ふすま絵の鑑定依頼のはずが…
安土桃山時代末期から江戸時代初期に狩野派の絵師によって描かれたものとされ、京都の公家、九条家が奈良県の談山神社に寄進したと伝わる。
2023年の夏、元京都国立博物館主任研究員で、狩野派研究で知られる山下善也さん(65)のもとに、メールでこの花鳥図の画像が届いた。仕事で中泊町と縁があった、元学習院大教授で日本美術史研究者の島尾新さん(71)からだった。「長く鑑定してこなかったので、町の関係者が専門家の意見を聞きたいそうだ」。町はふすま絵の鑑定を依頼しただけだったが、ここから話は思わぬ展開を見せる。
「この感じ、どこかで見たこ…