マルカ高橋水産の高橋力社長。手に持つのは1本の足が丸ごと入った活タコのあぶり焼き=2025年2月17日、宮城県石巻市雄勝町、中島嘉克撮影

 5億円をかけて新設したばかりの工場が、東日本大震災による津波で壊滅した。それでも再建を諦めない父(71)の姿を見て、東京にいた次男(36)は家業を継ぐことを決意した。新型コロナ禍、物価高と厳しさは続くが、挑戦を続けて窮地を乗り越えている。

 宮城県石巻市北東部の雄勝町。「マルカ高橋水産」は、雄勝湾奥の上雄勝地区に位置する水産加工会社だ。高橋力(つとむ)さんは昨年6月、父・貞(てい)さんの後を継いで2代目社長に就いた。「もともと水産業に興味があったわけではない。魚臭いし、汚そうというイメージがあったんです」

 14年前の3月11日は、青山学院大経済学部の4年生で東京都内にいた。午後2時46分、都内でも地面が波打つような揺れがあり、すぐに専務として働いていた母親の次恵さん(69)の電話を鳴らした。「今、逃げているところ」と言われたが、その後、しばらく電話はつながらなくなった。

被災しても諦めない父、継ぐことを決意

 震災による津波で、マルカ高…

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