米ロサンゼルスで金色に輝くゴールデングローブのトロフィーを手に全身で喜びを表現した無邪気な姿からは想像もつかないだろうけれど、テレビ作品に本格的に出始めていた7年ほど前の浅野忠信は、ただただ、いらだっていた。いや、怒っていた。
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民放の連続ドラマに初主演したのを機にインタビュー取材をしたときのことだ。映画俳優としての地位を確立していた浅野に、「なんでテレビに出るんだ」「映画でがんばってほしかった」という外野からの声が届いていたという。浅野は、映画、テレビドラマ、配信ドラマの線引きは「ナンセンス」と断じ、ジャンルに固執することに嫌悪感を隠さなかった。思い出すだけでも腹が立つのだろう。声が大きくならないよう、奥歯をかみしめて言葉を絞り出していた。
内モンゴルで確信した「映画の力」
なぜそんな思いに駆られるようになったのか。
浅野は、その取材時から約10年前、中国の内モンゴル自治区で目にした光景を「原体験」として話し始めた。
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