浦和実―東海大札幌 力投する浦和実2番手の石戸=小玉重隆撮影

 (25日、第97回選抜高校野球大会2回戦 浦和実8―2東海大札幌)

 浦和実の辻川正彦監督は驚きを隠せない。「いつの間にか、すごいピッチャーになってるんですよ」

 1点リードの五回からマウンドに送り込んだエース左腕・石戸颯汰のことだ。3日前の滋賀学園戦で115球を投げて完封。この日は左肩に張りが残っていたというが、落ち着いた表情を崩すことなく、九回まで無失点に抑えてみせた。

 独特なフォームが代名詞だ。

 右足を頭の高さまで振り上げて始動。背中を丸め頭が低い位置にある時、めいっぱい腕を伸ばして球を離す。その高低差が打者の感覚を狂わせるのか。

 スライダーやカーブに交える直球は120キロ台。なのに、とにかく芯で捉えられない。1回戦は27アウト中16個が飛球系。打力に自信を持つ東海大札幌も、15アウトのうち7個がフライだった。

 対戦相手からしても雲をつかむような投手のよう。東海大札幌の3番・太田勝心(まさむね)は「高めの変化球で目付けをされて。真ん中と思って振ったら高めの直球だった」。

 聖地での無失点は14イニングにまで伸びたが、石戸自身はひょうひょうとしている。「(自分の球は)打ちづらいかも。球速以上に、ストレートの伸びがあるんだと思います」

 強豪ひしめく埼玉にあって、全国的に無名だった浦和実。快進撃の中心に、つかみどころのない変則の背番号「1」がいる。

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