Smiley face
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三塁コーチャーを務める浦和実の小野=滝沢美穂子撮影
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(28日、第97回選抜高校野球大会準決勝 浦和実0―5智弁和歌山)

 5点差で迎えた九回。先頭の工藤蓮選手(3年)が中前安打で出塁すると、小野蓮主将(3年)は小さくガッツポーズした。チームは、勝負を諦めていない。「このまま続いてくれ」。そう三塁コーチスボックスから選手を見つめた。

 「勝てるチームにしたい」と自ら志望して昨夏から新チームの主将になった。当時は「私語が目立ち、メニュー間の移動も走らないなど恥ずかしいものだった」。バス移動の時間を雑談ではなく試合の準備やサインの確認にあてるなど、小さなことから変えていった。

 時に厳しい言葉をかけ、練習では常に緊張感をもたせるように努めた。勝つために何ができるかを考え続けるようになったチームは、初の甲子園で快進撃を続けた。

 この日は「これまでと変わらない調子で迎えた」が、これまで18回無失点の石戸颯汰投手(3年)が初回につかまり2失点。だが、タイムでマウンドに行くと「やっぱ智弁は強いね」と笑顔で切り替える仲間がいた。その後も小技を絡めて出塁を狙い、守備では積極的に打球に飛び込んでアウトを重ねた。小野主将も九回、最終打者が三振に倒れるまで、声を張り上げた。

 憧れだった甲子園での戦いは終わった。だが、涙は流さない。脳裏に浮かぶのは反省点ばかりだ。「まだまだ(チーム改革は)道半ば。この大会を機にもう一度自分たちを見つめ直します」。そう更なる成長を誓った。

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