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後ろ向きに水に飛び込む寺田実穂子記者(右)=東京都江戸川区、関田航撮影
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 海や川などでの事故を防ぐため、日本ライフセービング協会などが子どもたちや指導者向けに「流されてみる」体験会を開いている。海水浴場での溺水(できすい)事故の原因は「離岸流」が半数を占めるといい、もし流されても慌てず、流れを横切るように脱出するのがいいという。体験会に記者も参加してみた。

 日本財団などの調べでは、溺れた経験のある人は必ずしも泳ぎが不得意だったわけではなく、半数は25メートル以上泳げる人だったという。

 水泳教室に通っていた経験がある記者(33)も、過信はよくない。7月23日、東京五輪の会場にもなった東京都江戸川区のカヌー・スラロームセンターで、人工的に作った流れを利用して流されてみる体験会に参加した。

 その前に、まずは流れのない水に飛び込んだ。着ていたライフジャケットが口元まで浮いてくる。ライフセーバーは「ベルトがゆるいですね」。きつくすると、体の前後に圧がぐっとかかって固定された。

 もし沖に流されてしまったら、できるだけ体力を使わずに浮きながら長く泳げる「イカ泳ぎ」がお勧めだという。仰向けになって、手と足を上から下にかいて進む。ところが、今度は首の後ろが痛くなってきた。

 ライフセーバーは「力が入っています」。仰向けのとき、頭を水面から持ち上げすぎていたらしい。思い切って後頭部を水につけ、流れに体を預けるといくぶん楽になった。「漂っているほうが体力温存にもなります」という。

 手足も連続してかき続けなくても、かき終わった後のほうが進んでいるとも助言された。確かに、かいたあとに体をまっすぐ伸ばしているときこそ、すーっと前に進んでいる気がした。

 次は、離岸流に見立てた人工の流れに飛び込み、逆らって泳いでみた。

 平泳ぎだと、前には進めない。クロールなら少し進めたが、休むことができない。20秒ほど奮闘したが、最後は疲れて流された。

 流れに逆らうのは体力を消耗するだけだ。だから、流れを横切る方向に、イカ泳ぎなどをして脱出する。離岸流は沖にいくと弱まるので、いったん流されてから脱出する手もある。

 ただ、流されているときに不意に顔に水がかかったり、鼻に水が入ったりすると、パニックに陥りかねないとも感じた。自然の海や川は地形が急に変わっていたり、海の生物に出会うかもしれないという不安があったり、平常心でいるのは難しいかもしれない。

 体験を終えて思ったのは、泳ぐのも流されるのも、ライフジャケットがあればこそだということだ。気を抜いても浮かんでいられる安心感は何物にも代えがたい。頼れるのは、泳力や体力よりもライフジャケットだった。

 釣り中の転落事故でも、海上…

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