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 繁華街のネオンのように、光を当てると海底で黄緑や青白に妖しく輝く海藻たち。虹色にも見える不思議な色は、宝石のオパールに似た構造で生み出されていると神戸大学などのチームが明らかにした。魚などが嫌う「まずい」物質でつくられており、色との組み合わせで魚に食べられにくくなっているとみられる。

 数年前、神戸大学の川井浩史・特命教授の元に、相談が寄せられた。本州最南端の地である和歌山県串本町の海中公園からで、ダイバーたちの間で緑色に輝くとしてひそかな話題になっている海藻についてだった。「ケヤリでいいんでしょうか」

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ケヤリ。クジャクケヤリとは違い緑色には見えない=神戸大学の川井浩史・特命教授提供

 ケヤリはブラシのような毛が特徴の海藻で、大名行列の先頭が手にする、棒の先に毛の飾りをつけた小道具「毛槍(けやり)」に似ていることから名付けられたとされる。コンブなどと同じ褐藻(かっそう)という種類で茶色く、和歌山で話題になった海藻は形が似ているものの、明らかに緑色に輝く色が違った。

 持ち帰って調べると、ハワイで見つかったことがあるが日本では記録がない種だとわかり、オスのクジャクの羽のような色にちなんで「クジャクケヤリ」と和名をつけた。

 海中ライトの下では輝くのに、採取して海上に出すとケヤリのように茶色い。電子顕微鏡で構造を詳しく調べると、クジャクケヤリは細胞に含まれる小さな袋の中にびっしりとサイズのそろった細かな粒が詰まっていた。一方で、ケヤリではこの粒のサイズがばらばらだと分かった。同じサイズの粒が光を受けると色の波長によって反射の程度が変わり、ヒトの目には緑色や虹色に見えるらしい。川井さんは専門誌に報告した(https://doi.org/10.1080/09670262.2024.2340020)。

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ライトを当てると緑色に輝くクジャクケヤリ=神戸大学の川井浩史・特命教授提供

■不思議な色、細胞内部の構造…

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