戦時中の水没事故で183人が死亡した山口県宇部市の長生(ちょうせい)炭鉱に残された遺骨の収容をめざし、潜水調査を進める市民団体が12日、ソウル市内で記者会見を開いた。犠牲者の多くが朝鮮半島出身である一方、遺骨収容に向けた日本政府の動きは鈍い。市民団体は韓国の李在明(イジェミョン)大統領に対し、石破茂首相への働きかけを求めるという。
長生炭鉱は1914年創業の海底炭鉱で、42年2月に坑内の天井が崩れ、海水が流入。死亡した183人の約7割は朝鮮半島出身者が占めた。
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記者会見したのは、遺骨の収容と返還をめざす「長生炭鉱の水非常(みずひじょう)を歴史に刻む会」(刻む会)の共同代表・井上洋子さん(75)ら。昨年から続ける潜水調査で遺骨の発見には至っていないが、遺骨が残るとされる主坑道とみられる空間を発見した。今月末に韓国のダイバーを招いて、来年1月中旬から2月上旬にかけては世界各地のダイバーを集めて、事故現場を含む坑道全体の調査を行うという。
これまで日本政府に協力を求めてきたが、遺骨収容につながる具体的な動きはない。井上さんは8月下旬で調整されている次回の日韓首脳会談を見据え、李氏から石破氏に協力を呼びかけてほしいと訴えている。韓国の市民や企業に調査を進めるための寄付も求めたいという。「本来は日本人が日本政府を変えていかないといけない。私たちの力が足りず申し訳ないが、力を貸してほしい。加害国と被害国の市民が力を合わせ遺骨返還を実現させたい」と話した。