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現場へ! バラバラ文化財の再建(4)

 積み上がったポリ袋は約860個。盛岡市の岩手県立博物館(県博)に2011年4月、津波で全壊した陸前高田市立図書館などから資料が運び込まれた。県指定文化財「吉田家文書」もあった。

 江戸時代、仙台藩から気仙地方の統治を任じられた地方役人の執務記録だ。核となるのが「定留(じょうどめ)」という95冊の和綴(と)じの日誌。1750年から1868年まで118年分95冊が残る。

 定留は鉄扉の重要書庫で木箱に収められていたため、流出こそ免れたが、海水につかって砂泥にまみれていた。

写真・図版
修復された吉田家文書の定留(文政三年)=岩手県立博物館提供

 歴史的文書を救ってほしいというSOSは、陸前高田市から一関市博物館を介して県博につながった。

 「魚の腐敗臭が混ざったような、すさまじい臭い」。ポリ袋の結び目を開いた県博の専門学芸調査員、目時和哉(42)は思わず顔を背けた。海水や泥につかった古文書の修復事例はほとんどなく、修繕方法も確立していなかった。作業は手探りで進めた。

カビが活性化し、腐敗の恐れも

 水を張ったコンテナに古文書…

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