短歌時評 小島なお
歌壇俳壇面で月1回掲載している、歌人の小島なおさんによる「短歌時評」。今回は音楽の「プレイリスト」に模して、アンソロジーの楽しみをつづります。
左右社からこの夏、発売された歌集『海のうた』が反響を呼んでいる。帯には「同時代の歌人100人がうたった100首の〈海〉の短歌アンソロジー」とある。
一ページに一首組、単行本よりもすこし小さく持ち運ぶのにもちょうどいいサイズ。海の色の深い青色のビニールクロス装にタイトルはさざなみの色の白の箔(はく)押し。シンプルで凝ったブックデザインにプロダクトへのこだわりが伝わってくる。選歌も構成も編集者ひとりで行っているという。
海に来れば海の向こうに恋人がいるようにみな海をみている
五島諭
海を見よ その平らかさたよりなさ 僕はかたちを持ってしまった
服部真里子
海に来る人はみなひとりひと…