復刻された駅弁「かしわめし」=2025年8月9日午後0時8分、福岡県行橋市、田中久稔撮影

 平成半ばに姿を消した駅弁がある。

 正方形の経木の箱。ふたを取ると、ほのかな杉の香りが鼻を抜ける。飯は、鶏のだしが優しくきいている。

 大鶴修二郎さん(61)は、その風味をありありと思い出す。幼い頃から親しんだ。「今日はかしわめしにしようか」。父親が言うと、心の中で小躍りした。

 列車旅をする人々のお供であり、家庭の食卓も彩った。「あの味に、また会いたい」。そう願う人々が結集し、この夏、復刻をめざした。

 つくっていた会社も、レシピも残っていない。記憶を頼りに、味をたぐり寄せた。

明治期から呼び売り「誰もが知る商店に」

 九州の東側をJR日豊線が南…

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