平成半ばに姿を消した駅弁がある。
正方形の経木の箱。ふたを取ると、ほのかな杉の香りが鼻を抜ける。飯は、鶏のだしが優しくきいている。
大鶴修二郎さん(61)は、その風味をありありと思い出す。幼い頃から親しんだ。「今日はかしわめしにしようか」。父親が言うと、心の中で小躍りした。
列車旅をする人々のお供であり、家庭の食卓も彩った。「あの味に、また会いたい」。そう願う人々が結集し、この夏、復刻をめざした。
つくっていた会社も、レシピも残っていない。記憶を頼りに、味をたぐり寄せた。
明治期から呼び売り「誰もが知る商店に」
九州の東側をJR日豊線が南…