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パリ五輪の聖火リレートーチの燃焼部などを製造した新富士バーナーの工場では、草焼きのバーナーを組み立てていた。山本洋平さん(左)に、工場を案内してもらう=愛知県豊川市

記者コラム 「多事奏論」 編集委員・伊藤裕香子

 桜ゴールド色のトーチで全国を巡った東京五輪の聖火リレーは3年前の6月、能登半島地震で今年被害を受けた和倉温泉を通った。五つの「花びら」から出る炎が太く一つに重なった聖火は、コロナ禍で街中を走れない。次の走者へとつないだのは、観客のいない公園だった。

 開幕まで2カ月を切ったパリ五輪。聖火リレーは、水辺にたたずむ世界遺産の修道院、モンサンミッシェルあたりのようだ。トーチはフランスらしいシャンパン色で、ワインボトル2本の底をつなぎ合わせたような形。動画を見ると、雨の日や水しぶきがあがる川面でも、聖火の赤い炎はくっきりと上に伸びるか旗のようにたなびき、大勢の人が見守る。

 時速60キロの突風にも、1時間に50ミリの大雨にも消えない聖火。外から見えない「ボトル」の中に、従業員90人の日本企業の技術が組み込まれている、と知る。

 トーチ2千本分の燃焼部とガ…

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