戦後80年が迫り、戦争経験者がこの世を去るなか、歴史の証人として戦争遺跡に注目が集まっている。一方で、文化財指定の動きは限定的だ。保存の課題と解決策を探った。(興津洋樹)
- 戦争遺跡を取材し20年、北九州の郷土史家が本出版「遺跡の保存を」
北九州市小倉北区の公園や市役所、病院が立ち並ぶ一帯には太平洋戦争時、西日本最大級の兵器工場「小倉陸軍造兵廠(しょう)」があった。一角に立つマンションの敷地内に、小銃を試し撃ちする「試射場」跡が残っている。
今年8月、戦争遺跡を巡る見学会で内部が公開された。コンクリートの高い天井に囲まれ、ひんやりした空間を、参加者たちが懐中電灯で照らしながら見学した。「時間が止まっているみたい」「こんな場所が残っていたなんて」と声があがった。
こうした貴重な遺構が残っている一方で、小倉陸軍造兵廠を構成していた多くの建物は姿を消した。大通り沿いにあった機関銃関連の工場跡は、2021年に解体された。石垣など小規模な遺構は残るものの、造兵廠の面影はほぼない。市内の山や高台には、空襲に備える高射砲陣地や照空陣地が多く残るが、劣化が進んでいる。
戦争体験を生で聞くことが難しくなるなか、戦争遺跡に目が向けられ、調査や実態把握が徐々に進みつつある。
福岡県教育委員会は20年…