優勝旗を受け取った大阪桐蔭の主将、中野大虎

 (18日、春季近畿地区高校野球大会大阪府予選決勝 大阪桐蔭6―2履正社)

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 トレードマークは笑顔。昨夏、甲子園のマウンドでピンチを迎えたときですら、そうだった。

 あれから9カ月。大阪桐蔭の主将となった中野大虎(だいと)(3年)は、春の府大会を制した直後、校歌が流れる間だけ涙を流していた。

 「(本当は)八、九回でちょっと泣きそうやったんです」

 チームメートがスタンドの方へ走っていく後ろで、ウィニングボールを片手にこっそり目元をぬぐった。

 右腕は11日の準決勝に続いて先発を託され、9回2失点。140球を投げて完投した。打っては八回の2点適時二塁打で試合の行方を決定づけた。

 ともに下級生のころからベンチ入りする森陽樹(はるき)(3年)と二枚看板を成し、今春は背番号1をつけた。

 それでも、エースとしての評価とは受け取らなかった。「経験もあるし、やっぱりチームを引っ張るキャプテンでもあるので1番をもらったと思う」

 昨夏、全国選手権に出場した大阪桐蔭は1回戦で中野が完封して勝利したが、2回戦で小松大谷(石川)に零封負けした。その後、部員による投票で中野が主将に選ばれた。「チームを勝たせるのが仕事。(背番号1より)キャプテンの方が重いかな……」

 練習では投手のメニューをこなしながら、野手の練習にもなるべく参加した。全員に目を配ろうと、ベンチから様子を見たこともあった。

 「自分の結果やメンバー入りのことばかり意識している選手が多かった」

 「(打席でつなぐ意識を持たないといけないと)小松大谷(との試合)のときから気づいていたけど、なかなかできなかった」

 昨秋の府大会は決勝で、この日と同じ履正社に敗れた。「チームのためにという思いがあれば粘り強くやれる」。全体のミーティングでそう伝え、打線の軸になる同級生には個別に「お前がやらなきゃだめだ」と言い続けた。

 この日は四、五回でともに上位打線の3連打で得点を挙げた。「フライアウトが少なくなって、全員がライナーの意識やフォローの意識を持ててきた」

 昨秋の雪辱を果たせただけでなく、チームの変化を見ることができたからこそ「一生懸命プラス感動っていうか……」。試合中はこらえた涙が、最後はあふれた。

 ヒットを打てば、一、三塁側で喜ぶ両ランナーコーチを見て応える。終盤になっても相手チームのバットを何度も拾った。「周りを見る力がついたのか、無意識でした」

 主将になって初優勝のウィニングボールは、今春初めてベンチ入りした左腕、佐井川湧牙(ゆうが)(3年)に渡した。「ここから出てくる投手。全員で力を合わせたいので」

 主将に見えているものは、たくさんあった。

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