うねる道路に、傾いた住宅――。昨年1月の能登半島地震で大規模な液状化が発生した石川県内灘町には、1年7カ月が過ぎたいまも、被害の痕跡があちこちに残る。
町北部の宮坂地区に住んでいた西田豊治さん(76)の自宅は、敷地ごと南側の町道にずれ込んで家を囲む塀が傾き、隣家との境界が分からなくなっている。
自宅は解体したものの、境界があいまいなため再建を考えることすらできない。「早く境界を画定して、土地を自由に使えるようにしてほしい」とこぼす。
日本海に面し、能登半島のつけ根にある内灘町と北隣のかほく市は、地盤が砂地で液状化が起きやすく、被害はそれぞれ126ヘクタール、42ヘクタールに及ぶ。
県によると、大きく傾くなどして全半壊の判定を受けた住宅は2市町で計945棟にのぼり、ほとんどが液状化によるものだという。
特に、砂丘と干拓地の境にあった地区では、液状化した地盤が低い方に流れる「側方流動」が起き、住宅地では最大3メートルのずれが生じた。
この側方流動によって土地の境界が大きくずれたことが、復興を妨げている。
境界がずれた場合、境界を測量しなおして登記する「地籍調査」が必要になる。ただ、今回は面積が広大なため、内灘町は専従の職員を置いて対応するものの、完了は2032年度になる見通しだ。かほく市は31年度の終了予定という。
内灘町は昨夏、被害が大きかった地区で住宅再建の意向を調査。回答した779世帯のうち24%が、「住宅の再建方法が決められない」と答えた。理由として、大半が「液状化対策の地区や方針が決まっていない」ことを挙げた。その結果、住宅の再建意向のある573世帯のうち、「被災時の土地で住宅を再建築」を希望したのは5%にとどまる。
県は今年5月、地籍調査にかかる時間を短くするため、国土交通省や法務省とともに液状化対策のプロジェクトチーム(PT)を設立。国が職員の派遣や財政的な支援をすることで一致した。
自治体と国、45センチの攻防
ただ、地籍調査後の対応については、県と市町、国との間で意見の食い違いがある。
国土調査法によると、地籍調…