大阪府池田市の閑静な住宅街を歩いていると、突如として明るい青色と黄色が目に入ってくる。民家の玄関口に取り付けられた囲いで、はめ込まれたガラス窓には「URUGUAY ウルクアイ」の文字が書かれている。
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ここは、万博グッズコレクターの白井達郎(たつお)さん(71)の自宅。1970年の大阪万博への「愛」が深すぎるあまり、ウルグアイ館だった建物の一部を移築した。
日本国際博覧会協会によると、大阪万博では86の国際館と企業館のうち、28のパビリオンが移築された。
ウルグアイ館の建物は万博終了後、まず兵庫県氷上町(現・丹波市)に移築され、ラーメン店として使われていた。
白井さんは、これまで1万点以上の万博グッズを収集してきた「万博コレクター」。収集の傍ら、全国に残るパビリオンの建築などをめぐっていた。
ラーメン店にも何回か通っていたが、2002年、店主から老朽化で建物を取り壊す予定と聞いた。「そんなんもったいない」。自宅に移築することを決めた。
建物全ては大きすぎる。そのため、特徴的なデザインの支柱や、国名の書かれたガラス窓など建物の一部を切り出し、クレーン車で運搬。自宅玄関前の塀を壊して取り付けた。
コレクターぶりに家族も「しゃあない」
家族には、移築の工事が始まるまで黙っていた。工事の音に「何が始まったん?」と聞かれて移築のことを初めて告白。白井さんのコレクターぶりを知っている家族の反応は、「しゃあないね。勝手にして」だったという。
ラーメン店時代、建物はオレンジ色に塗り替えられていた。「元の姿に」と万博の写真などを見ながらペンキを混ぜて塗り直した。
窓ガラスに日本語で「ウルクアイ」と書かれているのは、移築前からだ。ラーメン店の店主が国名を削ろうとしたが濁点しかとれず、あきらめて「ウルクアイ」に。移築後も白井さんは「おもしろいからそのままにしている」という。
移築直後は近所の人から「宗教施設になったのか」「民族料理店を始めるのか」と聞かれることもあった。
02年に、集めたグッズを展示する「万博ミュージアム」を自宅で開館。現在は閉館中だが、外観だけでも一目みたいと訪れる人もいるという。
「なぜだか、大阪万博は今でも人を引きつける魅力がある。当時を覚えている人が建物を見て、楽しい気持ちを思い出してくれたらうれしい」