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Re:Ron連載「スワイプされる未来 スマホ文化考」(第9回)

 いま、令和人文主義が席巻している。代表的なのは、株式会社COTENの深井龍之介さん、株式会社baton(QuizKnock)の田村正資さん、文芸評論家の三宅香帆さん、広告会社勤務で大阪大学招へい准教授の朱喜哲さん、哲学者の戸谷洋志さん、元スクウェア・エニックスのシナリオライターで、作家・書評家の渡辺祐真さんなど。哲学の造詣(ぞうけい)が深く、地動説の漫画『チ。―地球の運動について―』(小学館)で大ヒットした漫画家の魚豊さんを含めてもいいかもしれない。

 令和人文主義は、読書・出版界とビジネス界をまたいだ文化的潮流で、人文知の重要性を押しつけがましさ抜きに訴える姿勢に貫かれている。ここに挙げたのは、1985年から97年生まれの若い書き手で、コロナ禍の前後、つまり令和の時代に、この世代の躍進が始まっているわけだ。

 ゆる言語学ラジオという人気YouTube/ポッドキャスト番組のパーソナリティーをしている水野太貴さんもこの世代に該当するし、YouTubeやポッドキャストでマルチに活躍する佐伯ポインティさんも、動画などの中で折に触れて小説や新書などを薦めている。ここにも、広く人文知への志向を感じることができるかもしれない。

(左から)魚豊著『チ。―地球の運動について―』、三宅香帆著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』、谷川嘉浩著『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』

■もう少し軽快な「教養」の捉え方

 令和人文主義の書き手たちは、一般向けの書籍を多数刊行している。そのフィールドの一つが「新書」だ。新書が定番化したのは、戦後の教養主義の流れの中であり、具体的には、終戦からまもない1950年代のことだ。

 戦後の教養主義は、読書など…

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