深圳日本人学校近くの路上。新たに非常通報ボタンが設置され、厳重な警備が敷かれていた=2024年10月15日、中国・広東省深圳市、小早川遥平撮影

 中国広東省で昨年9月に深圳日本人学校の男児(当時10)が刃物を持った男に刺殺された事件で、男の初公判が24日、深圳市の裁判所で開かれた。即日結審し、裁判所は故意殺人罪で死刑判決を言い渡した。判決は動機について「ネットで注目を集めるために児童を殺害した」と認定した。

 在広州日本総領事館の貴島善子総領事らが傍聴し、外務省が明らかにした。

 事件は昨年9月18日の朝、学校まで約200メートルの路上で起きた。男児は親と一緒に徒歩で登校していたところ、腹部を刺され、翌19日未明に死亡した。

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 外務省によると、男は鐘長春被告(45)。判決は、被告が注目を集めるために犯行後にメディアに電話をかけるなどしていたことを指摘し、「極めて悪辣(あくらつ)で、極刑が相当」と認定した。

 事件があったのが満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日付であったことから、日本人学校関係者を狙った犯行かが焦点になってきた。しかしこの日の判決では、被害者が日本国籍であることも含めて日本への言及はなかったという。中国共産党系メディアは事件当時、44歳の定職に就いていない男による単独犯で、「偶発的な事件」だと報じていた。

 中国側は、事件の動機について「司法手続きの中で説明する」として、明らかにしてこなかった。そうした姿勢は学校の安全対策にも影響を与え、昨年12月の南京事件の追悼日には、中国にあるすべての日本人学校が休校やオンライン授業にするなどの措置をとった。

 深圳日本人学校に子どもを通わせる男性は「日本人を狙ったのかを最も知りたかった。そこがはっきりしないと不安が残る」と話した。

 中国では、昨年6月にも江蘇省蘇州市で日本人学校のバスが刃物を持った男に襲われて3人が死傷する事件があり、23日に被告の男に死刑が言い渡された。判決は動機を「借金苦」としたが、日本人を狙った犯行かどうかの言及はなかった。

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