昨年8月に長期政権が倒れたバングラデシュで、ムハマド・ユヌス氏(84)率いる暫定政権が発足してまもなく10カ月。国民の統合や新たな国造りを期待されながらも、根深い政治的分断や総選挙を巡る対立に直面する状況が続いている。
「国家の安全を確保し、法廷に関わる証人を保護するためだ」。暫定政権の閣僚は今月10日、ハシナ前首相の政権与党だったアワミ連盟(AL)の全面的な活動禁止を決定、その理由をこう説明した。
政権崩壊時にインドへ逃れたハシナ氏に、バングラデシュの法廷はデモ鎮圧で多数の死者を出したとして、人道に対する罪の容疑で逮捕状を出した。活動禁止は「裁判終了まで」とする一方、ハシナ氏の身柄がインド側から引き渡されるめどは立っていない。
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決定の背景には、昨年の反政府デモを主導した学生らが結成した政党やその支持者の動きがあったとみられる。数千人の学生が今月上旬、街頭で「AL禁止」を求めるデモを行い、暫定政権はこれに応じた形だ。
人権団体「権力乱用、アワミ連盟と同じ」と批判
15年にわたり政権を握ったALは、敵対する最大野党バングラデシュ民族主義党(BNP)幹部や支持者を拘束するなどの強権的手法が批判された。BNPは総選挙をボイコットし、有権者は投票先が限定された経緯がある。政権崩壊後は反対に、AL関係者らへの抑圧が強まっている。
国際人権団体ヒューマン・ラ…