コメ価格の高騰を受け、農林水産省は5~7月に備蓄米を毎月10万トン放出する。すでに放出した分も合わせ、放出量は約61万トンに上り、備蓄量は適正水準の3割の約30万トンに減る見通しだ。一方で、補充の見通しは立たず、危機に備えた制度の土台が揺れている。
10年に1度の不作による供給不足や、地震などの緊急時に備え、政府は年間需要のおよそ2カ月分にあたる約100万トンを目安に各地に備蓄米を保管している。
しかし、コメの価格高騰などを背景に、農水省は運用のルールを見直し、3月から備蓄米の市場への放出を始めた。例年は稲のタネをまく前の1月ごろから、複数回の入札で備蓄米を20万トンほど買い入れ、補充している。しかし、今年は流通への影響を避けるため、2025年産米の買い入れを見送り、今後の具体的な予定もない。
また、農水省は放出した備蓄米と同量を原則1年以内に買い戻す前提で放出を始めたが、「5年以内」に変更し、さらに備蓄米の補充が不透明となった。江藤拓農水相は16日の閣議後会見で、「極端に減ってしまうという事は、正常な状態ではない。早く水準を戻したいと思う」としつつ、コメ価格への安定に必要だとして理解を求めた。
専門家「コメの確保策検討は政府の責務」
農水省は備蓄米が底を突いた…