パソコンで動画を撮りながら、自分たちで考えたネタを練習する子どもたち=2024年7月12日、水戸市立見川小学校、上野創撮影

 「自殺、不登校、いじめを生まない学校作り」を掲げ、「教育漫才」を広めている元校長がいる。国語や道徳、特別活動などの時間に、子どもたちが級友らとネタを考え、みんなの前で発表する取り組みだ。「温かい笑いで学校を包み、毎日通いたくなる学校にしよう」と伝えている。

  • 【関連】子どもが伝える「いのちの授業」 生きづらさ経験、次は自分が講師に

 「死ね、うざい、むかつくなどのマイナス言葉は使わないようにね。たたく、蹴る、殴るなどの暴力はしない。胸に刻んでね」

 6月27日、水戸市立見川小学校の5年生たちに、講師の田畑栄一さんが語りかけた。「教育漫才をするのは自殺を防ぎ、不登校を減らし、いじめをなくしたいからです」と伝え、「いじめのほとんどは言葉と暴力で起きる。その真逆が温かい笑いです。冷たい笑いはいじめの元凶だからダメだよ」と念押しした。

 子どもたちは漫才の「型」を教わり、台本を考え、鏡の前などで練習を繰り返した。先生たちは子どもを信じて口を出さないのがルール。発表の機会は同日のほか、翌日の授業参観や7月にも設けられた。

 例えば男女3人組のネタは――。

 「ねえ、好きな鳥ってなに?」「スズメかな」「かわいいよね」「僕はタカ」「かっこいいもんね」「私はトリ肉」「おいしいけど今の話題で出さないでほしかったあ」

 別のトリオは――。

 「好きな動物は?」「ゴリラ」「僕はサル」「僕ドラえもん」「え、それ動物?」「空を飛べるもん」「いやタヌキじゃん」「ん?」

 教室では、笑いと拍手が繰り返しわいていた。田畑さんは「見る側のときは思い切りスマイルね。拍手してくれたらステージの人はやる気が出るよ」と言って、事前に皆で大笑いと手をたたく練習をさせていた。

 本番では緊張でセリフを忘れたり、落ちが決まらなかったり。それでも、教室は優しい空気に満ちていた。出番が終わった子たちは、安堵(あんど)と達成感が入り交じる表情を浮かべていた。「台本をもっと面白くして、またやりたい」という声もあった。

 感想文では「友達と自分を笑顔にすることが心に残りました」「緊張したけど笑ってくれてとてもうれしかった」「友達ともっと仲良くなれた」などの記述があった。「楽しくて心もすっきり。学校に温かい笑いがあればいじめや不登校は本当になくなると思った」と話す児童もいた。

ネガティブな言葉、冷たい笑いはNG

 田畑さんは元は中学の国語教…

共有
Exit mobile version