温泉街の「廃虚」が、今秋にもおしゃれなアート拠点としてスタートする。群馬県みなかみ町の水上温泉街で、東京大学大学院の学生たちが地元住民と一緒に古い建物をリノベーション。温泉街の味わいを深める場所へと変身させようとしている。
明るい色合いのフローリング。スポットライトが壁を照らし、人気のカフェのような雰囲気だ。「水道やトイレの取り付け以外は、業者を頼まずに自分たちでやりました」とリノベーションに取り組んだ同大大学院修士1年の石井聡太さん。
この建物は1967年に建設され、温泉旅館の社員寮として使われていた「旧ひがき寮」の一部。旅館の閉館で住む人がいなくなり、雑草に覆われた「廃虚」となっていた。
高度成長期に発展した水上温泉街だが、バブル崩壊などで客足が遠のき、廃業する旅館が相次いだ。「廃虚」が目立つようになった温泉街をなんとかしようと2021年、町と住宅大手オープンハウス、東京大学大学院工学系研究科、群馬銀行の4者が協定を締結し、「水上温泉街再生プロジェクト」をスタート。旧ひがき寮は取り壊される予定だったが、「壊してしまったら、この景観や空間の価値は二度と再現できない」と学生たちが反対。地元住民と一緒に保存して活用する道を探ってきた。
旧ひがき寮の建物はV字形に…