温泉街の「廃虚」が、今秋にもおしゃれなアート拠点としてスタートする。群馬県みなかみ町の水上温泉街で、東京大学大学院の学生たちが地元住民と一緒に古い建物をリノベーション。温泉街の味わいを深める場所へと変身させようとしている。

 明るい色合いのフローリング。スポットライトが壁を照らし、人気のカフェのような雰囲気だ。「水道やトイレの取り付け以外は、業者を頼まずに自分たちでやりました」とリノベーションに取り組んだ同大大学院修士1年の石井聡太さん。

リフォームを終えた旧ひがき寮の一室=2025年5月17日午後3時6分、群馬県みなかみ町、星井麻紀撮影
押し入れだった場所は地元のガラス工房の作品などを展示するスペースになった=2025年5月17日午後3時4分、群馬県みなかみ町、星井麻紀撮影
リノベーションしたトイレ。壁の一部にはオリジナルの壁を残した=2025年5月17日午後3時5分、群馬県みなかみ町、星井麻紀撮影

 この建物は1967年に建設され、温泉旅館の社員寮として使われていた「旧ひがき寮」の一部。旅館の閉館で住む人がいなくなり、雑草に覆われた「廃虚」となっていた。

 高度成長期に発展した水上温泉街だが、バブル崩壊などで客足が遠のき、廃業する旅館が相次いだ。「廃虚」が目立つようになった温泉街をなんとかしようと2021年、町と住宅大手オープンハウス、東京大学大学院工学系研究科、群馬銀行の4者が協定を締結し、「水上温泉街再生プロジェクト」をスタート。旧ひがき寮は取り壊される予定だったが、「壊してしまったら、この景観や空間の価値は二度と再現できない」と学生たちが反対。地元住民と一緒に保存して活用する道を探ってきた。

学生たちが作った模型など=2025年5月17日午後3時12分、群馬県みなかみ町、星井麻紀撮影

 旧ひがき寮の建物はV字形に…

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