国内外で注目を浴びるドキュメンタリー映画を、次々と世に送り出している「道場」がある。山形県の雪深い湯治場で開かれているという。一体どんな道場なのか。
名前は「山形ドキュメンタリー道場」。2018年に始まった制作支援プログラムだ。毎年冬ごろ、山形県の肘折温泉や蔵王温泉で5人ほどの監督を短くて数日間、最長で1カ月間合宿させる。基本的には自身の作品の編集作業に没頭させるが、この道場ならではの研鑽(けんさん)を積む機会も設けている。
例えば「乱稽古」。1人の監督が作品の企画を発表し、他の参加者らが質問攻めにする。1人あたり2時間、みっちり話し合う。質問を通じて、自分が何をうまく伝えられていないのか、作り手に気づいてもらう狙いがある。
先輩監督らが務める講師に個別指導してもらえるのも道場の魅力の一つ。ベルリン国際映画祭の常連で、「精神」で知られる想田和弘監督をはじめ、国内外で評価の高いドキュメンタリー関係者を招いてきた。
これまでに約20作品が道場から生まれた。第1回大島渚賞を受賞した小田香監督の「セノーテ」や、統合失調症の姉を記録し、ロングランで公開中の藤野知明監督の「どうすればよかったか?」、台湾最大の映画賞「金馬奨」にノミネートされ、今年6月に日本公開されたルオ・イシャン監督の「雪解けのあと」――。先鋭的なものから社会問題に切り込むものまで、作品は多彩だ。
山形は「ブランド」
海外にもその名が知れ渡り…