それぞれの最終楽章 認知症の家族をみとる(3)
スウェーデン福祉研究者 藤原瑠美さん
認知症の母を自宅でみとろうと私が真剣に考え出したのは1998年、在宅介護が始まって9年目だった。
東北地方へ1泊で旅行した際、ホテルに着くなり母が38度の発熱で近所の病院に運ばれたと伝えられ、そのまま夜更けにとんぼ返りしたことがあった。翌朝、私が会社を休んで病室に付き添うと、母は食事はおろか、飲み物さえも与えられていなかった。次の日、若い主治医から「誤嚥(ごえん)性肺炎で、退院するまで2週間ぐらいかかる」と説明された。
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当時、企業の管理職だった私は仕事で家を空ける昼間、東京都大田区福祉公社の介護サービス事業などを利用し、母の世話を頼んでいた。長い歳月をかけて親しくなった介護者4人はいずれも女性で、入れ代わり立ち代わり母を訪ねては、口から食べる訓練やトイレ介助などを根気よく担ってくださっていた。
そんな日常が入院生活で寸断…